大学ラグビー選手権2019-2020日程と展望「東高西低」が問われる関西の大学ラグビー事情を解説年末年始の風物詩である全国大学ラグビー選手権大会の全出場校と組合せが12月1日(日)に決定した。

本格的な試合が始まる12月15日を前に、全試合の勝敗予想と優勝校予想をすばりしてみたいと思う。大学選手権での早明戦リベンジはなるのか?

が、その前に、大学選手権をもっと楽しんでもらうべく、概要編として、大会ルールとシード校の紹介、歴代優勝校について振り返ってみた。

組合せでは、今回1番のサプライズ出場となった日本大学復活のきっかけとなった「サンドイッチ事件」について、そして、対戦相手の京都産業大学は、今季、何かと話題となっているが、大西監督は今季限りでの勇退を発表している。その強さの秘密には我が母校慶應が関わっていたりする。そして、「東高西低」と評される大学ラグビー事情についても斬りこんで解説していこうと思う。

母校慶應義塾 対抗戦最後の帝京戦で勝利!

我が母校慶應は、22年ぶりに大学選手権を逃す辛いシーズンとなったが、対抗戦最後の帝京戦では、29対24と、9年ぶりの勝利を挙げた。

来年の慶應は要チェックだ。

試合当日の11月30日は、午後3時からセミナーに登壇予定だったのだが、11半からのキックオフは事務所でLIVEで観て、試合後、半分泣きながらセミナー会場に向かった。

セミナーでは「皆、慶應みたいにがんばろう!」と訴えてみるも、ポカーンとしたリアクションであった笑

MOM(マンオブザマッチ)に選ばれた川合秀和副将のインタビューコメントには本当、泣きそうになった。慶應の「意地」を見れた試合であった。本当に4年生の皆様、おつかれさまでした。皆様の頑張りは、来年、3年生以下が絶対引き継いでくれる。

来年は娘が許せば春から応援に行こうと思っている。でもそこのハードルが1番高いのだが・・・小学六年生と言えばジャニーズが気になる年頃なので。

ONE TEAMが2019年流行語大賞に!


12月2日の今日は、2019年の新語・流行語大賞が発表された。年間大賞に選ばれたのはラグビーワールドカップ日本代表のスローガン「ONE TEAM」だ。流行語大賞に選ばれる程のラグビーの盛り上がりは嬉しい限りだ。

そして、早速、今日の本題に話しを移そう。

第56回全国大学ラグビー選手権出場校と組合せ決定!


※クリックで拡大(日本ラグビーフットボール協会

ワールドカップの優勝国予想では外れまくった結果となったが(笑)、今回の大学選手権は情報量と気合いの入れ方が違うので期待してみてください。

まずは、大学選手権の概要から解説を始めようと思う。

大学選手権の出場枠ルール

全国大学ラグビー選手権大会の出場校は、

・関東大学対抗戦(3校)

・関東大学リーグ戦(3校)

・関西大学リーグ戦(3校)

この3つのグループがメインなのだが、大学選手権ということで、全国的にラグビーを盛り上げるべく、東海・北陸・中国・四国代表から1校、東北・北海道代表から1校、九州学生リーグから1校が選出され、トーナメント方式で大学ラグビー日本一を争う。

野球やサッカーと違って、出場校の強さに格差があるため、実力的に拮抗するようにチームが選出されている。

上記のチームに加えて、前年の実績で決勝を争った大学の所属するグループにもう1校づつ出場枠が与えらえている。

今回で言うと、昨年の決勝戦は明治大学と天理大学で争われたので、明治大学の所属する関東大学対抗戦と、天理大学の所属する関西大学リーグ戦がそれぞれもう1校出場できる枠を獲得した。

一昨年は、決勝が帝京大学と明治大学となり、両校ともに関東大学対抗戦の所属だったため、関東大学対抗戦に1枠、そして、準決勝に残った東海大学と大東文化大が所属する関東大学リーグ戦に1枠が与えられた。

今回、関東大学リーグ戦は3枠となったため、東海大学、日本大学、流通経済大学に加えて、本来であれば、大東文化大や法政大学が入ってもおかしくないのだが、出場は敵わなかった。今季の関東大学リーグ戦は3枠を巡る厳しい戦いとなった。

4位となった大東文化大も最後の東海大戦では意地を見せ、インジャリータイムに入った時点で2点差に詰め寄る接戦となり、あの素晴らしいチームを大学選手権でも見たいと思うし、対抗戦最後の帝京戦で素晴らしいプレーを見せてくれた慶應大学も見たいと思うのだが、勝負の世界だから仕方が無い。

大学選手権のシード校にメリットはある?

トーナメント表を見て頂くとお分かりかと思うが、シード校が存在する。

明治大学、東海大学、早稲田大学、天理大学の4校がシード校だ。

大学選手権のメインの戦いは12月15日(日)に始まるのだが、その時にこのシード校4校は試合が無く、1試合分休めるメリットがある。

だが、去年の優勝校である明治大学は、関東大学対抗戦では4位だったため、シード校ではなく、12月15日から試合は始まった。今回で言えば、筑波大学のポジションから勝ち続け優勝したのである。

昨年のシード校だった帝京大学や早稲田大学は途中で敗れ、決勝は天理大学との戦いとなった。

その意味で言えば、シード校制度があるものの勝敗の行方には関係ないと言える。

大学選手権歴代優勝校と優勝回数

ここでちょっと、これまでの大学選手権の歴代優勝校とその回数を振り返ってみようと思う。

大学名 優勝回数 準優勝回数
早稲田大学 15 16
明治大学 13 10
帝京大学
関東学院大学
同志社大学
法政大学
慶應義塾
大東文化大学
日本体育大学
天理大学
筑波大学
東海大学

大学選手権の歴代優勝回数最多は、早稲田大学の15回、続いて明治大学が13回と競っている。

帝京大学の優勝回数9回は、2009年から2017年までの9連覇になる。

関東学院大学は2006年を最後に優勝から遠ざかっていて、現在は低迷中なので、復活を望むところだが、皆さんご存知の「笑わない男」の稲垣啓太選手は関東学院大学出身だ。

同志社大学の優勝では、平尾誠二さんの時代に3連覇を果たしている。

法政大学と言えば、スポーンと気持ちいいほどの異常に深いバックスラインが特徴だが、現在は試行錯誤中。

我が母校の慶應大学も3回の優勝を誇っている。

大東文化大学の2度の優勝(86年、88年)に貢献したのが、トンガ出身のシナリ・ラトウ選手で、日本代表に初めて入った外国選手と言われている。

日本体育大学は実は、早稲田大学以上に展開のチーム。ひたすら展開を続ける当時の早稲田vs日体大の試合を一番楽しみにしていたものだ。現在、低迷、というものの、慶應は日体大に負けてしまっていて、今、復活の兆しを見せていると言える。

大学選手権で優勝しているのは実にこの12校のみである。

天理大学は、前回2015年のW杯の中心人物だった立川理道選手(CTB/SO)のいた頃が強かったのだが、帝京大学という壁があった。

筑波大学も、日本代表の福岡堅樹選手のいた頃が強かったが、帝京には勝てなかった。

準優勝3回を数える東海大学もほとんど帝京大学に負けている。

それほど、9連覇中の帝京大学は強かった。

「日本大学」復活のきっかけは『サンドイッチ事件』


日本大学ラグビー部公式HP

今回の大学選手権で一番のサプライズと言われているのが関東大学リーグの日本大学だ。

低迷期が長かったが、今季は関東大学リーグ2位となり、関係者の間では復活したと称されている。

日本大学は、昔からバリバリのフォワードで有名で「ヘラクレス軍団」と恐れられていた。

この日本大学の強くなった理由と言われているのが「サンドイッチ事件」だ。

コアファンなら知っている話と思うが、今の4年生が1年生の時(2016年)に起きたのがサンドイッチ事件と言われている。

当時、中央大学戦に負けた後、監督が、「今日の試合に負けたのには理由がある」と切り出したという。「今日、試合前にレギュラー選手が一生懸命練習している時、皆が応援している中、1年生の何人かはサンドイッチを食べていて、全然、心こここにあらずの状態だった。そんなチームが勝てるわけないだろう。」と告げたという。そこから、1年生から3年生は全員、グラウンドに戻って練習したと言う。そこから、生まれ変わったのだ。

これを考えると、明治が強くなった理由としてあげられる武井日向選手の「掃除をします」は一緒だなど。

つまり、ラグビーのプレーは素晴らしいかもしれないけど、大学ラグビーで強くなるためには、身の回りのことであったり、人としてどうなのかという人間力を鍛える必要があるという証明の2つめと言える。これは間違いない。

そう考えると、低迷期も無く、いつも強い早稲田は、学校の教育的に昔から自然と早稲田ラガーマンとして、ラグビーだけでなく人として成長しろ、というのが徹底されているのではないか。だからこそ優勝回数最多を数えるのではないか。

京産大 の「ハードワーク」のきっかけは慶應義塾

現在、一番練習しているハードワークで有名な大学と言うと、この日本大学と関西大学リーグ4位の京都産業大学である言われている。

昔、ハードワークと言えば、慶應の代名詞だったので、この2校がより練習していると知ったのはちょっとショックだった。

京都産業大学の記事が今季、何かと目立つのは、これまで46年に渡りチームを率いていた大西健監督が、今年で引退することを表明しているからだ。大西監督の最後を優秀の美で飾りたいと選手達は奮起しているのだ。


この大西監督は、慶應大学が一番辛い練習をしている時に見学に訪れ、自分達の練習の甘を感じ、ハードワークに目覚めたのだという。京産大が強くなったきっかけとなったエピソードである。

その日本大学と京都産業大学のハードワーク同士が12月15日の1回戦で激突する。

復活の兆しを見せた日本大学と、大西監督に優秀の美を飾らせたい京都産業大学の熱い戦いが予想される。

その試合で勝ったチームが、12月21日、早稲田大学と対戦することになる。(勝った後も厳しい道が続いている)

大学ラグビーの「東高西低」とは?

現在の大学ラグビーは、「東高西低」と言われている。

関東大学対抗戦と関東大学リーグに比べて、関西大学リーグの力が見劣りしていて、関西の大学が関東に勝にためには相当、気合いを入れる必要がある。

関東大学対抗戦4位は我が母校の慶應が入っていても良かったところだが、この場所にいる筑波大学に期待している。

今季、筑波大学には第2位の福岡堅樹と言われている松永貫汰選手(2年FB/SO)がいる。超天才で要チェックの選手だ。現在のポジションはフルバックでウィングもできるのだが、将来的にはスタンドオフになるんじゃないかと言われている。NZ代表のボーデンバレットコースだ。


筑波大学ラグビー部公式HP

筑波大学は、関西大学リーグ2位の同志社大学と12月15日に対戦する。

関西ファンの方は怒るかもしれないが、関西の大学ラグビー事情を言わせて頂くと、天理一強過ぎる。

2位の同志社大学と3位の関西学院大学、4位の京都産業大学と、今回、出場は敵わなかった立命館と近畿大学、あと、摂南大学の力がほぼ拮抗している。

関西大学リーグの星取表を見ると、混戦状態に入り乱れている状態だ。


関西ラグビーフットボール協会

対して、こちらが関東大学対抗戦の星取表。


関東ラグビーフットボール協会

慶應に負けた帝京大の黒星が1つあるもののほぼ綺麗にわかれている。それに比べて、関西大学リーグは天理大学以外は入り乱れている状態だ。

関西大学リーグのチームが関東に勝てない理由はここにあるんじゃないかと思っている。

関西の大学は最初から天理大学に勝つことを諦めているのではないか。1位の天理は決まっているので、2位、3位、4位に入るために頑張ろうという感じがどうしてもしてしまう。

それに対して、関東では、帝京一強時代でも、明治と早稲田はそれを許そうとはしなかった。帝京大学がどんなに強くても絶対勝ってやると、その結果、関東対抗戦に所属するチーム全体の力が引き上げられ、今回、慶應大学が負けてしまった筑波大学や日体大の力も引き上げられることとなった。

関西大学リーグに於いても2位~4位争いが重要なのは分かるが、天理を食ってやるというぐらいの1年間を過ごさないと、関東には追いつけないと思います。

そして、天理大学は関東しか見ていない事実がある。天理大学は関東に勝つ為にはどうしたらいいということしか見ていない。

天理大学の小松監督は、昨年、明治と決勝戦で対した時に「もう(関東の)背中が見えた」と言っていたのだが、今年に入って、春の練習試合や夏合宿の時に「また(関東は)遠くなった」と言っていた。

というのは、関東の大学は練習試合のためにわざわざ関西に行くことはしない。関西も公式戦以外に関東に行くことはない。ということは、近場で練習試合をすることになるのだが、関東であれば、帝京、早稲田、明治が切磋琢磨しているので自ずとレベルアップが図れるのだ。だから、小松監督も関東に勝つ為には、関西大学リーグのレベルを上げなければいけないと言っている。関西の大学が天理についていくという意識が無いと「東高西低」の図式は中々、変わることはないだろう。

今年の同志社はいつもより強い同志社なのだが、関西の中だけで戦うのではなく、大学選手権で勝つ為には天理に勝つ意識が必要だ。

僕の出身校である慶應高校で言うと、桐蔭学園に勝たないと花園には出れない。だが、桐蔭学園に勝てば、いちゃ悪いが全国優勝も狙える。花園に出るためには全国で1位になるぐらい練習をしなければいけないと思ってやっている。

目標設定の場所が、2、3、4位の椅子取りでは無く、同志社、関西学院、京産大が力を合わせて、「天理をマジボコりたい」ぐらいの勢いとなって関西大学リーグのレベルが上がってくれることを望みたいと思う。