大学ラグビーが盛り上がりを見せる中、注目なのが12月1日の早明戦だ。関東大学対抗戦で早稲田大学と明治大学が全勝で激突するのは実に25年ぶりのこととなる。
今回は、早明戦の過去の戦績や歴史を振り返りつつ、今の明治大学ラグビー部の強さについて、特に監督にフォーカスしてお話していこうと思う。
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明治大学ラグビー 戦績から見る低迷期からの復活劇
早明戦の戦績は明治から見て38勝2分54敗と、過去の対抗戦の戦績では早稲田の勝率が高いが(ちなみに早慶戦の戦績は慶應の20勝69敗7分だ)、北島忠治監督の「前へ」の明治が僕は大好きだ。
僕が現役時代の時、明治は超強かった。卒業後はラグビーを離れたが、早慶明の試合は見ていた。明治大学は一時期低迷していて、去年から復活を成し遂げたところにドラマがある。
前に話したことがあるが、明治戦の試合でカメラが捉えた北島忠治監督はどんな状況でもタバコをくわえていたものだ。
その北島忠治監督が、1996年に亡くなった後、明治大学は一気に低迷期に入ってしまい、22年間、大学選手権の優勝からは遠ざかっていた。
大学選手権では明治の強さが目立つ
大学選手権の戦績は、明治が早稲田に7勝5敗となっており、昨年も対抗戦は早稲田が勝ったのだが、大学選手権の準決勝では明治が勝利していて、明治は本番に強いと言える。
大学選手権の決勝での対戦は過去、9回あるのだが、なんと明治の6勝3敗である。
僕に息子がいたら絶対明治でラグビーをやらせたいぐらいだ。
雪の早明戦
早明戦のドラマと言えば、1987年12月6日の「雪の早明戦」。僕はあの時中学生で試合を観ていたが、雪だとキックしても転がらないものなんだと思ったものだ。キックを蹴っても雪のためボールが止まってしまい、ゴールラインで早稲田がずっと明治から守っていたのを凄く覚えている。こんな素敵なスポーツをやれてるんだなと思うほど有名な試合だ。
※6日の前夜から雪が積もった悪天候の中、早稲田・明治は激しい攻防を繰り広げた。5年ぶりの優勝を目指す全勝の早稲田に、対するは3連覇を目指す1敗の明治との戦い。早稲田の堀越正己選手(SH)や今泉清選手(WTB)、明治は吉田義人選手(WTB)など、後の日本代表の中心選手が出場している。対戦は、8分にも及んだロスタイムで明治の猛攻が続くも、脳震盪の退場者を出しながら凌いだ早稲田が10-7で勝利し対抗戦優勝を決め、今でも「伝説の試合」と語り継がれている。
明治を変えた丹羽雅彦監督
僕が現役の頃、試合で一番ケンカをするのが明治大学だった。明治は喧嘩っ早く、すぐキレるのだが、そのオラオラ系が明治の強さだった。明治と試合をする時は、ある程度、喧嘩をすることを覚悟で臨んでいたものだ。今の明治大学の監督は田中澄憲氏だが、その前の丹羽雅彦監督が明治を変えたと言われている。
昨年、大学選手権を優勝した際の監督である田中澄憲氏にフィーチャーしがちだが、実は、その礎を築いたのが、丹羽雅彦監督で、元ウイング。現役時代の活躍を僕も良く見ていた。
その丹羽さんが監督になった時に驚いたことがあって、明治は紫紺の白と紫のジャージ、僕も何回しかないのだが、セカンドやサードのジャージを着てる中、黒黄のメインのジャージを貰うのは凄いことで、ジャージを渡された時はベッドで抱えて寝るくらいだったが、明治のその紫紺のジャージが普通に床に落ちていたことに驚いたという。
丹羽雅彦監督が明治を強くしようと入ってきたわけだが、プレー云々の前に、このジャージを着るために皆、練習をしているというのに、なんで普通にこのジャージが落ちているんだ、ということに衝撃を受けたという。
そこで、丹羽雅彦監督が真っ先に行ったことが、プレイヤーの前に1人の人間としてどうなのか、という教育を徹底したのだ。
武井日向選手「もっと掃除します」
昨年、3年だった武井日向選手(HO・現主将)が、大学選手権で優勝して「来年も連覇狙います!」と言いながら、来年何を頑張りますか?と聞かれて、「もっと掃除します」と言ったのだ。
つまり、練習はちゃんとやるけども、1人の人間として成長しないとラグビーは勝てない、ということを明治はここ数年で知ったのだ。だから明治は強い。
慶應と早稲田は昔から人間としての学びはある程度やれていたのだが、今の明治はバンカラの気持ちを持ちながら優等生をやっているから、本当に強い。今は乱闘シーンなんて全然無い。昔はラックで相手を踏むのが普通で、僕も踏まれまくって、踏まれ返して不毛の戦いになったものだが、明治は、そういったバンカラの気持ちを持ちながら、今、優等生になっているから強いのだ。
練習の場でこういったプレーをしようとか、サインプレーを教えるなどは小さなことで、ラガーマンとして、人としてどうなのかということに向き合うために、丹羽雅彦監督は寮に住み込んで徹底的に教え込んだのだ。
去年、明治大学が大学選手権で優勝をした時、田中澄憲監督に真っ先に抱きついていった丹羽雅彦さんを観て、僕は泣いちゃったくらいだ。現役時よりも太ったな、というのはありますが、本当に感動した。だから僕は明治が大好きなのだ。
田中澄憲監督は、丹羽監督下のナンバー2の存在で、明治大学を強くするためのブレーンだったが、丹羽雅彦氏が自分の役割は終わったということで引退して、田中澄憲氏が監督になった。
ジャパンラグビーコーチングアワード2018 最優秀賞は明治大学の田中澄憲監督https://t.co/qrTRRqv1tK pic.twitter.com/SOF4gMMYEi
— ラグビーリパブリック (@RUGBY_REPUBLIC) April 18, 2019
2人とも、僕が現役時代に近しい人だからこそ、尚更、明治の復活劇は本当に嬉しい。僕の大好きな慶應の最大の敵だが、明治が強いと気持ちがいい。
タックルで言えば、キャプテンの武井日向選手(4年HO)が一番に向かって行くし、箸本龍雅選手(3年LO)はアタックばかりが目立っているがディフェンスも素晴らしい。
明治のラグビーは楽しいし、多分、2023年のワールドカップ(W杯)フランス大会には、今の明治大学の選手が結構、入ってくるのではないか。
斉藤直人とフィフィタがサンウルブズメンバー入り!
11月26日、早稲田のスクラムハーフ斉藤直人選手のサンウルブズ入りが発表された。第一次スコッドで発表された15人の中で、日本人は彼1人だった。
大学生からはもう1人、天理大学のセンター、シオサイア・フィフィタ選手(3回生)も選ばれている。
フィフィタ選手は、昨年の大学選手権でトライを決めた時、NHKのカメラに向かってポーズを決めた人物。僕はカッコいいなーと思ったのだが、ラグビー関係者からは、そういうチャラいことをやるべきではないと大クレームとなってしまった。
早明戦の勝利の行方と大学選手権への影響は?
明治に話しを戻すと、いよいよ明日は早明戦である。
下馬評では明治有利と言われていて、僕も90%は明治だろうと思う。
佐野とマサキの早明戦予想は確信をついているので、ぜひ、一緒に楽しんでもらいたい。観ると、「これが、片倉選手か」「幸重選手って、全然、言われていなかったけど、めちゃタックルしてる!」と、当日、楽しくなるはずだ。
早稲田が明日の早明戦で勝ったとなると、明治は、負けた瞬間から練習に励みまくるので、そうなれば、大学選手権が凄いことになるだろう。
今回、明治が勝って「やっぱり俺たち強いんだ」となれば、大学選手権で、早稲田や天理大学に足元をすくわれる可能性が高くなる。そんな楽しみもあったりする。
早明戦は明日、12月1日(日)地上波NHK総合で13時50分から生中継される。キックオフは14時だ。ぜひ、一緒に楽しみましょう。