トップリーグ2020は第3節まで終了したが、ここまで神戸製鋼の強さが際立っている。
今季の神戸製鋼の強さの秘密を語る時、外国人選手の活躍抜きには語れない。
だが、昨年の神戸製鋼で、ダン・カーター(SO)とハーフ団を組んで活躍していたアンドリュー・エリス選手(SH)が今年は、なんでリザーブなんだろうと思われる方もいらっしゃるのではないだろうか。
今日は、ラグビートップリーグでの「外国人選手」の定義と何人までが同時に試合に出ることができるのかなど、「外国人枠」について、神戸製鋼を例に、一度じっくり考えていきたいと思う。
目次
ラグビートップリーグ「外国人枠」の話
■外国人選手の定義とは
まずは、外国人選手の定義について見て行きたいと思う。
これは、ラグビー日本協会の規定で決まっている。
外国人選手の定義(日本協会 チームの登録に関する規程 第14条)
外国人選手とは、日本国への在留資格を有し、その在留期間中にある外国籍の選手であって、次の各号に該当しない者をいう。
(1)日本国政府より特別永住権を認められて、日本国に在住している者。
(2)日本国の義務教育の修了者であって、引き続き日本国に在住している者。
日本代表の選手で言うと、
リーチマイケル選手やラファエレ選手、中島イシレリ選手等は帰化しているため(1)に該当するので、外国人選手ではなく、日本人選手としてプレーをしている。
そして、
(2)に該当する日本代表選手が、具智元選手とアタアタ・メアキオラ選手だ。
具智元選手は、大分にある佐伯市立鶴谷中学校を卒業していて、アタアタ・モエアキオラ選手は、15歳の時に来日し、東京の目黒学院で一時的に日本の義務教育を受けている。
そのため、いずれも(2)に該当する。つまり、彼らは学生時代から外国人選手ではなく日本人選手としてプレーをしているのである。
次に、外国人選手についてみていくが、外国人枠というのは、下記の3タイプ(+1)に分かれている。
1.外国人枠(外国籍選手)同時出場は2名まで
2.特別枠選手 同時出場は3名まで
3.アジア枠選手 同時出場は1名まで
(4.ボーナス枠(セブンズ)+1名)
つまり、外国人枠として、23名の選手中、6名まで外国人選手の同時出場が可能なルールとなっている。
それぞれ、詳しく見ていこう。
1.外国人枠(外国籍選手)同時出場は2名まで
外国籍選手についてのトップリーグの規約を見ていこう。
Ⅲ. 競技
第2節 公式試合
第 35 条〔外国籍選手〕
1.外国籍選手とは、外国籍を持つ選手のうち、日本国以外の国代表歴のある選手(日本代表になる可能性がない選手)を指し、同時出場は 2 名までとする。
外国籍選手が同時に試合に出れるのは2名までと規約で決まっている。
つまり、神戸製鋼の試合で言うと、ダン・カーターに加えて、今年は5番でLOのレタリック選手が2人目として出場しているため、同じ外国籍選手であるアンドリュー・エリス選手は出れないことになる。
どうしても、ダン・カーター選手とアンドリュー選手を組ませたい、となったら、レタリック選手を下げなければならない。
レタリックはチームの中心で、後半も元気だし、どうしても下げたくない、でも、スクラムハーフを日和佐篤選手から、エリス選手に交代させてテンポを変えたい、となったら、ダン・カーター選手を下げなければいけなくなる。
なので、今年はどのチームもトヨタのキアラン・リード選手だったりと、海外の有力な選手を加入させているが、沢山加入させたところで、全員を一度に出場させることはできないのだ。
2.特別枠選手 同時出場は3名まで
ややこしくなってくるが、次は特別枠について見て行こう。
規約第 35 条〔外国籍選手〕
2.特別枠選手とは、外国籍であり日本代表の選手及び日本代表になる可能性がある選手を指し、同時出場が 3 名までとする。
1.の外国籍選手との違いは、「日本国以外の国代表歴」があるかないかという点である。
どういった選手のことを言うのかは日本代表選手を見てもらえば分かりやすいかと思う。
・ジェームス・ムーア(宗像サニックス・オーストラリア)
・ピーター・ラブスカフニ(クボタ・南アフリカ)
・アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコム・トンガ)
こういった選手が特別枠選手、ということになる。
第3節の神戸製鋼の試合では、
・トム・フランクリン(6番FL)
・タウムア・ナエアタ(8番NO8)
・リチャード・パックマン(13番CTB)
の3名が特別枠選手となっている。
・ラファエレティモシー(13番CTB)
・アンダーソンフレイザー(14番WTB)
の2人は横文字の名前の選手だが帰化しているため日本人選手として出場している。
最初にお話したように、彼らのように帰化した選手や、日本の義務教育を受けた選手は、そもそも外国人選手にはカウントされないので外国人枠とは無縁なのだ。
3.アジア枠選手 同時出場は1名まで
3.アジア枠選手とは、アジア・ラグビー・フットボール協会加盟国協会の国籍を持ち、且つ、日本協会を含むARFU加盟国協会の代表選手となる資格を有する選手を指し、同時出場は 1 名までとする。但し、南半球、欧州の“トップリーグ(含む 13 人制リーグラグビー)”でプレーした経験のある選手を除く。
・張碩煥(チャン・ソクファン)選手(4番LO)
が今日の神戸製鋼ではアジア枠で出場している選手になる。
具智元選手の場合、昨年12月に帰化をしているが、彼は義務教育を日本で修了しているため、学生時代からアジア人枠ではなく、日本人としてプレーをしている。
アジア枠がなぜあるのかというと、これは、日本ラグビーだけでなく、アジアのラグビーをもりあげようぜ、ということで決まったルールなんじゃないかと思う。
ここまで、外国籍選手、特別枠選手、アジア枠選手の3種類をみてきた。
このルールにのっとると、外国籍選手2名+特別枠選手3名+アジア枠選手1名の計6名が同時に試合に出れるMAXの人数ということになる。
チームによっては、外国籍選手が少なくて、特別枠の選手が多い、といった場合もあるだろう。
その場合、外国籍選手枠分を特別枠選手としてカウントしてもOKということになっている。
つまり、外国籍選手枠が1人しかいない場合、特別枠選手が4名となってもOKということになる。
そして、さらに、セブンズボーナス枠なるものがある。
(4.ボーナス枠(セブンズ))
今季はトップリーグとサンウルブズが重なってしまっていて、どうしても企業チームとしてはサンウルブズへ選手を送り込みたくないところかと思う。
それと同じで、今年のオリンピックで行われるのがセブンスの大会なのだが、トップリーグに集中させたい企業は、セブンスにも選手を送り込みたくないのが本当のところだろう。
そこで、日本のラグビーの発展のため、日本が金メダルを獲得するため、企業からセブンズへ選手を派遣してくれたチームへは、特別枠としてプラス1名、外国人枠を増枠してあげるよ、というルールがある。
なので、チームによっては、最大7名の外国人選手が出ているケースも多い。
そういったケースを知って、それでは自分たちのチームもと、セブンズに選手を派遣するチームも出てきているとのこと。
そうはいっても23名中外国人選手のMAXは7人ということで、半分以上は日本人選手が占めている。それが国内リーグの楽しみでもあるかと思う。
「外国人枠」がある理由とは?
なんでラグビートップリーグに外国人枠のルールがあるかとお思いの方もいらっしゃるでしょう。
昔は出場できる外国人枠はもっと少なく2人と言った具合だった。
トップリーグはそもそも、日本のラグビーを強くするために存在している。
日本人中心のチームとして日本人の実力の底上げをしなければいけない、ということで、昔は外国人選手は2名しか出れなかったわけである。
ところが、そんな良い選手がいるのに、日本人選手の成長が遅いということになった。
そこで、優秀な外国人選手を試合により出すことにより、一緒にプレーする日本人選手の実力の底上げをしようぜとなって、成功しているのが現在の姿である。
外国人枠が増えたことは、日本人選手の実力の底上げとは別のメリットも生んでくれた。
昨年のワールドカップで言えば、ラブスカフニ選手のように南アフリカでも代表となれるくらいの実力の持ち主が、日本代表になることを選んでくれるということも起こっている。
トップリーグが積極的に外国人選手を受け入れたことは、日本ラグビーのためにも良かったんじゃないかと思う。
だからこその、昨年のワールドカップでの日本代表の活躍があったんじゃないかと思います。
まとめ
1月26日の神戸製鋼を例にまとめてみると、
神戸製鋼は、ダン・カーター、レタリック、エリスという海外代表歴のあるスーパー選手を抱えるチームなのだが、3人全員一緒にプレーできるわけではない。フィールドに同時に出せるのは2名までとなる。
さらに、外国籍の選手で、日本代表もしくは、その可能性のある選手が沢山いても、同時に出場できるのは3名までで、先ほどの海外代表歴のある外国人選手と合わせて5名、そして、アジア枠でもう1名、さらには、セブンスで日本に勝ってもらいたいので、派遣してくれたチームにはバックアップとして1名追加していいよ、となっている。
もし、間違いがあるとしたら、指摘していただけると幸いです。