「おっ 頑張れ!小倉!!」
2月29日の夜、事務所に戻ってパソコンを立ち上げ、お約束のJ-SPORTSでサンウルブズ VS ハリケーンズの試合を1人観戦するも、KICK OFFと同時に自然とそんな言葉が出てくる自分に多少なりとも驚きは隠せなかった。
「やっぱ、俺って小倉選手のこと大好きなんだな~」
と。
「小倉順平 NTTコミュニケーションズを退社してサンウルブズに挑戦」
そのNEWSは2月14日、正に晴天の霹靂という言葉が相応しく筆者の耳に入ってきた。
「マジか……すんげえ挑戦だ。。。」
松島幸太郎も所属してた、今じゃ伝説の桐蔭学園45期生のキャプテン小倉順平。
彼の非凡な才能は桐蔭高校→早稲田大学→NTTコミュニケーションズと戦う場所が変われど、筆者を魅了し続けてきた。
慶應ファンの筆者としては、目の上のタンコブな選手と言っても過言ではないが…w
小柄にも関わらず、視野の広さ・創造性のあるパス・FWを勇気付けるキック、、
どれを取っても、最高のスタンドオフと言っていい小倉順平選手のファンの1人が筆者である。
先日、Numberで特集された
「田村選手の次のSOは誰だ?」という記事に、小倉順平選手の名前がなく急いで動画を撮影した経緯すらある。
小倉順平
昔からのラグビーファンなら知らない人はいないだろうが、あの日本中を沸かせたW杯からファンになった方は知らない方もいらっしゃると思うので、軽く経歴を。
小倉順平選手の経歴プロフィール
小倉順平(おぐらじゅんぺい)現在27歳。
8歳からラグビーを始め、2011年桐蔭学園卒業後、早稲田大学へ入学。
桐蔭学園3年生時には、チームの主将として花園で全国優勝を果たすが、東福岡高校との両校優勝という結果であった。
桐蔭学園としては勝てる試合だっただけに最後追いつかれての同校優勝、初の単独優勝が最後手からこぼれ落ちた瞬間の気持ちは容易に想像できる。
表彰式での優勝した主将のキャプテンとは思えない彼の悔しそうな顔が印象的だった。
引用:Twitter.com
その悔しさがさらなる彼の成長を飛躍させることになるのだが、、
早稲田大学 → NTTコミュニケーションズと進み、2016年秋にはジィミー・ジョセフHCの初陣を飾る日本代表メンバーに、あの田村優と共にSOとして選出される。
2017年1月にはスーパーラグビー・サンウルブズのスコッド入り。
同年、アジアラグビーチャンピオンシップの韓国戦で初キャップを獲得、同年6月のアイルランド戦で先発10番を担うなど、日本代表4キャップを獲得している。
ただ、その後は代表から遠ざかり、2019年の日本代表選出には後1歩のところで届かなかった。
そんな彼は2023年のフランスW杯時でも31歳。
まだまだ若い彼に活躍に期待するラグビー ファンは多い。
ご存知2020年度は、昨年の日本W杯開催の関係上、スケジュール的にスーパーリーグとトップリーグの開催が被ってしまった。
例年ならば、春=スーパーリーグ 秋=トップリーグと厳しいスケジュールだが、選手としては両方に出場できていただけに悔しまれる。
今年はどちらかを選ばなきゃいけない。
そして大半は「トップリーグ」に出なきゃならない現実が今のラグビー業界だ。
ここに日本ラグビーのプロ化の問題が少しだけ垣間見える。
日本のラグビー チームはいまだに、企業主体の運営。
・神戸製鋼
・パナソニック
・サントリー
・ヤマハ etc
そうそうたる日本を代表する企業がチームの運営費を支払うことで成り立ってきた。
ラグビー人気が今ほど全くない時から、莫大な費用を企業は輩出してきたからこそ、前回の日本代表の活躍はある。
長いラグビーファンの筆者としては本当に頭が上がらない。
そういう意味では、企業としては今年は千載一遇のチャンス。
このブームにのり、ラグビーだけでなく自分たちの会社のイメージアップを図るべく、、
もっというと今までの投資を回収すべく、今年のトップリーグへの力の入れようは計り知れない。
当然、小倉選手の所属するNTTコミュニケーションズも同じ想い。
なので、企業としては小倉選手に「NTTコミュニケーションズ」での活躍を期待していた。
しかし、トップリーグが始まる昨年末から小倉選手はチームに掛け合う。
「サンウルブズで自分を試したい……」と。
小倉選手は最初は社員としてプレイするも、入社3年目からプロ契約を結ぶ。
このプロ契約上、どうしてもサンウルブズでプレイするのは厳しかったようだ。
日本のラグビープロ化は特殊だ。
言うなれば、日本ラグビーはプロ+セミプロの集団と言える。
ここが、野球・サッカー・バスケとは違うところ。
ちなみに、小倉選手の所属しているNTTコミュニケーションズは、外国人選手を抜かして正式なプロ選手は、
・主将:金正奎 選手
・WTB:山田章仁選手
・WTB:石井魁選手
そして、小倉選手の4名のみ。
今季大活躍の池田悠希選手は社員選手だ。
その他、40名近くは社員選手として活躍する方が大半であり、これは別にNTTコミュニケーションズに限った話ではない。
多くのチームは似たり寄ったりの構成になっている。
この中途半端なプロ化を元早稲田大学監督+ヤマハ監督であった清宮克幸氏が完全プロ化に動いているが、、
個人的にはかなりハードルは高いと思われる。
なぜならば、
「選手全員が望んでないから」だ。
引退した後のセカンドライフは??
今の社員として保証されていることに安心感を抱く選手は多い。
引退してもその企業で働ける。。
ちなみに、W杯で大活躍したCTBの中村亮土選手もサントリーの社員として、昼間はビールの営業を行い、夜に練習を行い、代表の座をもぎ取った。
だからこそ、普通に日本で「プロ契約」を選ぶ選手の時点で、覚悟が必要だ。
ラグビーを引退した後、何も保証されていないのに等しい。
それに対して、野球やサッカー関係者からの
「甘い」という声も分からなくもない。
全員プロ化すれば、仕事のことを忘れてラグビーだけに集中できるのは分かる。
だけど、、
じゃあ、野球やサッカーよりも怪我が多いラグビー。
選手寿命が短いラグビー。
プロになって1年目で大怪我をしたらどうなるのか?
どのスポーツも同じリスクはあるが、間違いなくラグビーはそのリスクが高い。
筆者はおかげさまで、プレイヤーとしては3流であったため、そんな悩みがなかったが、仮に選択を迫られてたとしたら、間違いなく「社員選手」を選んでいただろう。
これは筆者の予想だが、幾ら社員じゃなくプロ契約とはいえ、何かしらその企業との関係は築ける。
トンプソン ルークはちょっと異例とはいえ、ラグビーを引退しても近鉄とは関係が続く。
きっと、引退後、何かしらのセカンドライフに向けてそういうことを期待している選手は多いはず。
ただ、、小倉選手は「退路」を絶った。
「NTTコミュニケーションズ退社して、サンウルブズに挑戦」
という何の保証もないチャレンジを選択した。
これまたご存知、サンウルブズは今季限りでスーパーラグビーから脱退する。
つまり、来年の小倉選手の行先の保証は何もない。
NTTコミュニケーションズの内山GMは、自らリクルーティングしてきた小倉選手の来季以降の活動を心配し、小倉選手に尋ねるも小倉選手はその話も拒絶したようだ。
「背水の陣」
「退路を絶った、リスクある挑戦」
このチャレンジを応援しないラグビーファンはどこにいるのだろうか?
彼の日本代表への想いを痛いほど感じたNEWSである。
ハリケーンズの試合で先発デビューを果たすも、まだまだ小倉選手の才能・パフォーマンスはこんなもんじゃない。
閃きのある判断、穴を一瞬で見つけ攻める嗅覚。
172センチというラグビー選手として小柄な小倉順平選手の覚悟あるチャレンジ。
桐蔭学園→早稲田大学 と自分の大好きな学校のライバルで活躍しまくった小倉順平選手のさらなる飛躍を心から応援する。